gazou

自分の漫画もがしがし投稿しなくては!なのですが、cakesで連載中の漫画「左ききのエレン」がHOTなので、ごり押しレビュー(レビューなの?)を。
友人知人に薦めまくってもみんな読んでくれないので、「インターネットの波に流したろ!」と思い、キーボードを叩いている次第です。

漫画を読んでくださっている貴重な皆様でしたらご存知の通り、
私の「スイッチ押して死ねるなら死にたい」モードは継続中。
そんな中毎日23時頃まで仕事して、ようやく明日は休みだぜ、な金曜日。
とりあえず寝よう、とにかく寝ようと床に就いた24時、なぜかこの漫画を読み始めてしまったのです。
これが失敗でした。気づいたらキンドル駆使して、(当時)既刊5巻を読破しておりました。
失敗でした、っていうのは本当は嘘です。大正解でした。
布団の中で、涙をぼろぼろ流して、くそうと思ったりじーんとしたりして、すがすがしい気持ちで寝ました。
少なくともこの漫画が完結するまでは、絶対に死ねません。

自分の凡庸さに悩んだことのあるあなたなら、きっとこの漫画の様々な人物の言葉に傷つき励まされ、自分の人生のどこかで、その言葉を思い出すはずです。

まず、「左ききのエレン」ってどんな漫画よ?

元々広告代理店で仕事をされていた、かっぴーさんによるWeb漫画(といっていいのかな。連載はWebでされています)。

自分の才能が開花することを願って走り続ける「意識高い系」の凡才、朝倉光一と、
類まれなる画才を持ちながら、ある出来事をきっかけに鉛筆を置いてしまった山岸エレン、
二人を中心に展開していくストーリーです。

第一話は、美大を卒業したのちに大手広告代理店に入社した光一のエピソードから始まります。

光一は、正直な私だ

光一は、高校生だったとき美術部一、絵がうまかった。
光一は、学生時代イベントを主催したりしていた。

でも、エレンと同様にずば抜けた才能を持っているモデル、岸あかりに言われる。

「光一さんて・・・あれもできる これもできるってさー
使えない”できるコト”かき集めて・・・
何も捨てられず ガラクタ数えて安心しよーとして

そんなに自信ないんだ 自分に」

上司の神谷には、こんなことを言われる。

「自分大好きだもんな・・・ もっとデキると思ってるだろ」
「思ってもない過小評価でハードル下げて 楽するんじゃねぇーよ・・・!!」

光一は、才能に憧れる。でも、才能はない。
かといって、努力だって突き抜けてできるわけじゃない。自分に、甘い。
でも自分にダメ出しするポーズをとっても、ほんとはもっとできると、思っている。

私も天才じゃないから。私も、努力だってできないから。
そしてそんな自分がだめだって言って、かっこわるい保身ばっかりしてるから。

だから泣いてしまう。光一がどこまで行けるか、見届けたくなってしまう。

天才になれなかった全ての人へ

昨年、電通の新入社員の女性が自ら命を絶つという悲しい事件がありました。追い詰められて、視野がどんどん狭くなって、いろんな道が見えなくなってしまったから、ということが背景であることは間違いありません。

しかし、それだけではないのではないだろうか、と私は思うのです。
「承認されていない」と思うことは、食べられないことより、眠れないことより、時に人を死に近づける。
電通をやめることは、「自分は自分が思っていたより特別じゃない」と認めることに通じる部分があって、
それが難しかったということが、あるんじゃないだろうか。

ストーリーが進む中で、仕事にすべてをささげる男「柳」が出てきます。
親が死のうが子供が生まれようが、それは柳の定規では仕事を休む理由にはなりません。
「ぼくのデザインはフォアグラや 作り方がエグくても出来上がった料理は最高にうまい」とか言っちゃう。

45話で柳が光一に放つ言葉、「何か残して死ね」。
光一と一緒に、私の胃も痛みました。
仕事より大事なこといろいろあるだろ、と反論する私の、小さな心の声。
どうして「小さな」声かって、柳が言うことも、わかっちゃうから。
柳のようにすべて突き詰めて何か残せたら、自分への甘えを全部排除できたら、
そうしたらどこに行けるだろう、と思う自分も、いるから。

だから、「普通の人生じゃやだよ・・・!」と泣いたことがあるすべての方に読んでほしい漫画です。

自分は天才じゃないと自覚して、戦略的に生きていく(けど、自分で思うより器用じゃない)女「さゆり」。
頭がいい、ちゃんと大人、だけど情熱は忘れない男「神谷」。
魅力的なキャラクターがばしばし出てくるので、実写化のキャストを妄想するのも、楽しいですよ。
※この漫画、とっても実写化キャストについて考えたくなる作品なのです。
すでに「私ならこのキャストにするわ」という記事をブログに載せている方とか、いらっしゃいますね。
私は
処世術としてドライになったように見えて、ちゃんと熱い心を持っている、光一の会社の営業「流川」とか、
神谷の先輩・ロマンチスト「八谷」とかが好きです。
あ、さゆりも、ルーシーも好き・・・(きりなし)。

1~3話と最新話はCakesで無料で読めます。毎週木曜日更新!(最近木曜日が楽しみです)
左ききのエレン|かっぴー|cakes(ケイクス)
絵が苦手だ・・・という方もいらっしゃるかもしれませんが、それで読むのをやめてはもったいないです。本当に。
(ちなみに絵がどんどん洗練されていくのを見るのも、この作品を読む楽しみの一つです)
この漫画は、間違いなく、「生きるための読み物」です。

【後日追記】
木曜日の最新話更新日、
「一体何時に更新されるのじゃ!かっぴーさんは書いてないじゃろか!」と
かっぴーさんのTwitterを拝見したところ、
この記事が紹介されていて電車の中でめちゃ心拍数上がりました。
Twitterは読むだけなので、お礼ができないのが・・・悔しい・・・
かっぴーさんありがとうございます!手紙が届いた気分です!

Kindle版はこちらからどうぞ。