gazou

私は海外旅行が好きです。
最初に行ったときほど、観光名所に感動することは少なくなってきてしまいましたが、
その場所では毎日繰り返されているであろう、一日の終わりの様子に心揺さぶられたり、
旅先で出会った人たちと話すのが前より楽しくなったり、新しい楽しみ方を発見しつつあります。
旅をすると、きれいな空気を肺に入れるみたいに、1回きれいな気持ちを手に入れられる気がします。
トラブルもあるけど、それも思い返すと、面白い。人生を豊かにしてくれる感じがする。

今日は、旅が出てくる作品、旅を髣髴とさせる作品を、紹介します。

ハチミツとクローバー

映像化もされましたが、漫画のほうのお話をしたいと思います。羽海野チカさんの作品。
以下、「ハチクロ」と、書きましょう。

美大を舞台に、うまくいかない恋ばかりが描かれる話である、ということはご存知の方が多い・・・でしょうか。
綴られているのは主に「愉快な日常」なのですが、「若者とかつて若者だったもの」「天才と才能に焦がれる者」など
胸をぎりぎり締め付ける対立構造がこれでもかと入れられていて、意外と深刻な漫画でもあります。
だから、人生のいろんな局面で読みたくなります。

切り取り方はいくらでもあるのですが、今日は旅のお話、なのでした。

ハチクロの中で好きなエピソードの一つに、竹本くんの「自転車日本一周」があります。
特に「雨の終わる場所」を初めて彼が見るところ。大好きです。
「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し」とは萩原朔太郎の言葉ですが、
逆に最近は「こんなに近くて、あっけなく着いちゃって、よかったんだっけ」と
思うことが多いです(贅沢ですよね・・・)。
飛行機にぼんやり乗っていたら、多少体は痛むけど、気づいたら異国についてる。
ちゃんと遠いということを踏みしめてきた竹本くんだから、見えた景色がある。
「あまりに遠い」ことをちゃんと確認しながら進むような旅がしたくなります。

人情ヨーロッパ 人生、ゆるして、ゆるされて

本です。たかのてるこさん著。

『ガンジス河でバタフライ』の人、と言ったらぴんとくる方も多いのでは。

旅人として生きている、たかのさん。
ある日ラジオに彼女が出ていて、彼女の前向きなあったかいエネルギーを感じて、
この本を買ってしまいました。

ヨーロッパ21か国鉄道旅の記録を2冊に分けて著されていて、
この『人情ヨーロッパ』は、後編にあたります。
「たかのさんがこんなに心を開いているから、人を信じようとしているから、
いい人に会えて素敵な旅になるんだろうな」と、読みながらずーっと思っていました。
それぞれの国や地域の歴史や観光名所のことも出てきますが、
何より興味深いのは、たかのさんと旅先で出会った人たちとの会話です。

たかのさんはこの旅である人と出会ったことから、
「絶対許せない」と思っていた、彼女にひどいことをした人たちを許すことにします。
国が違っても、年齢が近くなくても、
わかりあえる人が、世界のどこかにいるかもしれない。
たかのさんの本を読むと、人を信じたくなります。

前編も大好きです。
たかのさんの面白さ全開なのに(ヌーディストビーチでのエピソードとか爆笑です)、
働くこと(オランダでは週休3日も珍しくないとか)、
愛すること(パリで出会ったゲイカップルとたかのさんのやり取り。何度も読み返したい)、
いろんなことについて真面目に考えさせられます。

たかのさんみたいに、愛にあふれる素敵な人になりたいなあ!

牝猫たち

映画です。監督は、『凶悪』の白石和彌さん。
ストレートな「旅」映画でないけれど、私は観終わって旅のことを考えたので入れてみました。

この作品、「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」として製作された5作品のうちの、1本。
なんでまた「ロマンポルノ」を観に行ったかというと、愛聴しているラジオで薦められていたからです
(私の行動の60%はラジオがきっかけです。ほほほ)。
ロマンポルノって、女一人で観に行くような映画じゃないというイメージだったのですが、
ラジオで「女性にもぜひ観てほしい」と話されていたこと、
母と観に行って衝撃を受けた『凶悪』(リリーフランキーとピエール瀧が信じられなくなる怖い映画)の
監督がメガホンをとるということなどから、観てみたのでした。

結論から申し上げると、「女ひとりじゃ入りにくいって思って観なかったら、もったいない」映画でした。
もちろん凝視するのに忍びないと思うような場面も当然あったわけですが(10分に1回笑)、
それを乗り越えて観るべきシーンが、たくさんある。

描かれるのは、池袋の風俗店「極楽若奥様」で働く、3人の女の人たち。の、寂しさ。

雅子さんが屋上で、「真っすぐ私を傷つけて」と言う場面。
里枝さんと大声で笑いあっていた雅子さんが、一人になったときに見せる表情。
結依さんの、声色。里枝さんが、男の人の後悔を溶かそうとかける言葉。
心に刺さったところは、枚挙にいとまがありません。

・・・「旅」を髣髴とさせるシーンの話をするんでした。
好きなシーンの一つに、
ネットカフェ難民の雅子さんが、ほんの少しの荷物をガラガラ引いて池袋を歩くところがあります。
冒頭に車内のシーンが置かれているこの映画は、雅子さんが車に乗り込むシーンで終わります。
なんか、雅子さんは、ずっと移動しているように見えるんですよね。
てきぱき歩いていても、猫みたいに、しなやか。

もしかしたら、雅子さんには
この生活から脱したくて仕方ない日もあるのかもしれない。
でも、それでも、軽やかに夜の街を移動する彼女が素敵で。
たくさんの荷物と、しがらみに悶々としている私には、とてもまぶしく映りました。

実はこちらは2017年1月から公開されている映画でして、
都内ですと、新宿武蔵野館で2017年2月3日金曜日まで観ることができます。
※DVDなど発売情報を入手したら、気づき次第更新します!

以下は、日活の作品紹介ページです。
http://www.nikkatsu.com/movie/32957.html

せっかく旅がテーマだったので。リアルな旅の話も少し。
よっしゃ、次の休みこそ旅行に行くぜ!
個人で旅程を組むぜ!という方には
トリップアドバイザーをお薦めしますー。
観光名所の感想などは「え、ここなんで評価高いんだ」とか
そういう楽しみ方もできますよー。


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