来福の家
台北市生まれで、日本で育った温又柔(おんゆうじゅう)さんによる小説。
温さんの芥川賞ノミネート記念も兼ねて(?)のご紹介です。
温さんが書かれたものを別の機会に読むことがあって、
それが美しくて温かくて、とてもいいなあと思いました。
人が好きな方なんだろうな。芯からの優しさがにじみ出ている。
幼い頃に日本に移り住んできて、いまや日本で暮らした年月の方が長い。
台湾の親戚は、「縁珠はもう日本人だ」と言う
(縁珠は、髪を切ってもらうとき、台湾のことばで自分の希望をうまく伝えることができない)。
彼女のお母さんが日本語以外のことばを話すのを、
縁珠の日本人の友達は目を丸くして見つめる
(だってそんな言葉で話すのは、「普通」じゃないから)。
縁珠のもやもやした気持ちは少しずつ放出するのじゃ足りなくなって、
ある日爆発し、彼女は少しだけ壊れます。
本を閉じて、「普通」の私たちは、どうしたらいいんだろう、とぼんやり考えました。
どうしたら、縁珠みたいな人たちを傷つけなくて済むのだろう。
餃子屋の店員を見習って、たまには寡黙な時間を楽しみ、
ことば(何語でも可)をお腹のそこの水溜まりに泳がせてみてもいいのかも。
太陽
設定がやや複雑なので、ちょっと公式サイトからあらすじを借りてきましょうかね(怠慢)。
ウイルスの感染を克服し心身ともに進化したけれど、それと引き換えに太陽の下では生きられない体質になってしまった新人類【ノクス(夜に生きる存在)】。もう一方は、太陽の下で自由に生きられるものの、ノクスに管理されることで貧困を強いられている旧人類【キュリオ(骨董的存在)】。キュリオからノクスへ転換は可能だが、ノクスへの転換は医学的に20歳までの若者に限られていた。ある日、とある寒村でノクス駐在員がキュリオに惨殺される事件が起こる。その結果、村はノクスによる経済封鎖を受けてより一層貧しくなり、転換のチャンスも奪われてしまうのだった。
この村の住人のうち、ノクスになりたいと願いながら生きる青年を神木隆之介さんが、母親がノクスに転換して変わってしまった色々に心痛め、キュリオとして生きていこうとする女性を門脇麦さんが演じています。
キュリオの村から外に出る門は、ノクスの青年が監視しているんですね。
神木さんの演じるキュリオ・鉄彦は少しずつ彼と仲良くなっていきます。
この映画はいくつかの「圧倒的分断」が用意されていてずっしり重いのですが、
彼らの関係が希望として輝いているから、明るい気持ちも捨てないで観終えることができました。
(ちなみに、全編が暗い映画も決して嫌いではありません。必要だとも思っております)
神木さんは最初はノクスに関心があって青年に近づくんですが、
最終的に仲良くなったのは彼がノクスだからじゃなくて、いい人だったから(たぶん)。
そこが、すごくいい。
私、「私は中国人が好きです」っていう人が好きじゃないんですね。
(犬でいうところの)「お腹を見せる」的アプローチなんだろうな、っていうのはわかるんです。
敵意は持ってないんだよ、って言いたいということは。
でも、日本人だって性格いい人も悪い人もいるのに、
中国人全般が好きって、あまりにも乱暴なくくり方じゃないかしら、と思って。
所属とか、育ってきた環境(山崎まさよし風)とか、あとは持病とかいろいろ、
その人の構成要素であることは間違いないと思うんですけど、
それで「その人が好きか嫌いか」の判断を、単純化したくないです。
単純化しないように、気をつけて生きていきたいです。
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